SNS追悼アカウント設定|主要各社の仕様と代理投稿例文

SNS追悼アカウント設定 デジタル終活の基礎

こんにちは。「ZetStart(ゼットスタート)」の管理人「Jin」です。

もし自分に万が一のことがあったとき、毎日使っているFacebookやInstagram、Xのアカウントがどうなるか考えたことはあるでしょうか。

私自身、30代で弟を急な病で亡くした経験があります。

その際、悲しみに暮れる間もなく弟のスマホ解約やSNSの対応に追われ、パスワードもわからず途方に暮れたことを今でも鮮明に覚えています。

デジタル遺産という言葉が一般的になりつつありますが、具体的にどのような準備が必要なのか、また遺族としてどう削除申請や死亡報告を行えばよいのか、悩んでいる方も多いはずです。

この記事では、主要なSNSにおける追悼設定のやり方や、いざという時のためのマナーについて、私の実体験を交えながら分かりやすく解説します。

自分にはまだ早い、と思われるかもしれませんが、アカウントの乗っ取りや「なりすまし」といった死後のトラブルを防ぐためにも、元気なうちに対策をしておくことは非常に重要です。

残された家族が「写真が見られなくて悲しい」と嘆くのか、「思い出を綺麗に残してくれてありがとう」と感謝するのかは、今のあなたのちょっとした設定ひとつで決まります。

専門的な知識がなくても大丈夫です。

一つひとつ丁寧に手順を追っていきますので、ぜひ最後までお付き合いください。

  • 主要SNSごとの追悼アカウント設定や削除手順の違い
  • 遺族が手続きを行う際に必要な書類や申請フォームの場所
  • 失礼にならないSNSでの死亡報告の書き方とテンプレート
  • アカウントを放置することで起きる乗っ取り等のリスク

主要なSNS追悼設定のやり方と各社の仕様

主要なSNS追悼設定のやり方と各社の仕様

SNSと一口に言っても、運営会社によって「死後の扱い」は全く異なります。

Facebookのようにデジタル墓標として残せるものもあれば、X(旧Twitter)のように削除一択という厳しい現実もあります。

遺族がいざ手続きをしようとしたとき、プラットフォームごとの仕様を知らないと、用意すべき書類が足りずに二度手間になったり、誤って大切なデータを消してしまったりするリスクがあります。

ここでは、主要なプラットフォームごとの具体的な仕様と手続きについて、私が実際に調べた経験や弟の整理を行った際の手触り感も含めて解説します。

それぞれの違いを理解して、自分に合った「仕舞い方」を見つけていきましょう。

Facebook追悼アカウントの管理人設定手順

Facebook追悼アカウントの管理人設定手順

Facebookは、実名制を基本としているため、デジタル遺産に関する機能が最も充実しています。

世界中のユーザーが利用しているだけあって、死後のプライバシー保護と思い出の保存のバランスが非常に巧みに設計されているのが特徴です。

最大の特徴は「追悼アカウント(Memorialized Account)」という仕組みです。

これは、亡くなった方のアカウントを「追悼」ステータスに切り替え、オンライン上の記念碑として残すことができる機能ですね。

追悼ステータスになると、プロフィールの名前の横に「追悼(Remembering)」と表示され、ログインは完全に凍結されますが、友達は引き続き思い出の写真を見たり、タイムラインにメッセージを投稿したりすることができます。

特に重要なのが、生前に指定できる「追悼アカウント管理人(Legacy Contact)」の存在です。

これは、万が一の時にアカウントの管理を託せる友人を指名しておく制度で、私も自分のアカウントでは信頼できる友人を指定しています。

なぜこの設定が重要かというと、本人が亡くなった後、遺族であっても故人のアカウントにログインすることは規約違反となり、パスワードを知らなければ手出しができなくなるからです。

しかし、あらかじめ管理人を指定しておけば、その人だけが公式に権限を持って、アカウントの「店じまい」や「維持」をコントロールできるようになります。

管理人はログインこそできませんが、以下の操作が可能です。

【追悼アカウント管理人ができること】

  • プロフィール写真とカバー写真の変更(遺影への変更など)
  • 追悼投稿(葬儀の案内など)をプロフィールのトップに固定表示
  • 新しい友達リクエストへの対応
  • (許可があれば)写真や投稿データのアーカイブ保存

例えば、葬儀の日程を知らせる投稿をトップに固定したり、葬儀で使った遺影と同じ写真にプロフィールを変更したりすることで、Facebook上の友人たちに弔意を示す場を提供できます。

一方で、プライバシー保護の観点から「メッセージ(Messenger)の閲覧」や「過去の投稿の編集・削除」は一切できないようになっています。

これは、「死に人に口なし」という言葉があるように、故人が生前に交わした内緒話や、過去の記録が遺族によって勝手に改ざんされるのを防ぐための強力な配慮です。

私もこの仕様を知ったとき、Meta社の「個人の尊厳」に対する深い考えを感じました。

設定はとても簡単で、[設定とプライバシー] > [設定] > [アカウントセンター] または [個人の情報] > [追悼アカウントの設定] から行えます。

ここで友人を一人選び、メッセージを送って承認してもらうだけです。

また、「死後にアカウントを追悼にするのではなく、完全に削除してほしい」という場合も、ここから「死後に削除」を事前予約が可能です。

残された家族がパスワード探しで疲弊しないよう、Facebookを使っているなら必須の設定だと言えますね。

出典:Facebookヘルプセンター「追悼アカウント管理人のできること」

インスタグラムの追悼申請方法と必要書類

インスタグラムの追悼申請方法と必要書類

InstagramもFacebookと同じMeta社が運営しているため、基本的な考え方は似ています。

しかし、Facebookほど機能は複雑ではなく、よりビジュアル(写真や動画)を残すことに特化している印象です。

Instagramでも申請を行うことでアカウントを「追悼」状態にすることができ、プロフィールに「追悼」のラベルが表示されます。

これにより、故人のアカウントが「発見タブ」や「おすすめ」に出てこなくなり、事情を知らない人が偶然目にしてショックを受けるといった事態を防ぐことができます。

申請は、アプリ内の設定メニューではなく、専用のオンラインフォームから行う必要があります。

「亡くなった方のInstagramアカウントを追悼アカウントにするための報告」というフォームですね。

ここでのポイントは、申請に必要な書類の柔軟性です。

銀行口座の凍結解除などは戸籍謄本などの公的書類が必須ですが、Instagramの追悼化申請(削除ではなく追悼ステータスへの変更)の場合、比較的入手しやすい書類で対応してくれることがあります。

私が弟の件で手続きをした際は、死亡診断書の写しを用意しましたが、Instagramのヘルプには「新聞の訃報欄(死亡広告)」や「ニュース記事のURL」でも受け付ける場合があると記載されており、デジタルならではのスピード感を感じました。

【ポイント】Facebookとの連携

最近では「Metaアカウントセンター」でFacebookとInstagramを連携させている場合、Facebook側で指定した管理人がInstagramの管理権限も一部引き継げるようになりつつあります。

もし両方使っているなら、連携しておくのが一番スムーズな「終活」になりますよ。

ただし、アカウントを「追悼」ではなく「完全削除」したい場合は話が別です。

削除申請の場合、申請者が「正当な遺産管理人」や「近親者」であることを証明する必要があるため、出生証明書、死亡証明書、遺言書といった法的な証明書類が厳格に求められます。

これは、悪意のある第三者が勝手にアカウントを消去してしまうのを防ぐためです。

私としては、まずは写真を残せる「追悼アカウント」への移行を行い、気持ちの整理がついてから削除を検討するというステップを踏むことをお勧めします。

弟のアカウントも、しばらくはそのまま残しておき、命日などにコメントが寄せられるのを見て、家族みんなで慰められた経験があるからです。

Xのアカウント削除申請と追悼機能の不在

Xのアカウント削除申請と追悼機能の不在

ここで注意が必要なのが、X(旧Twitter)です。

結論から言うと、Xには公式な「追悼アカウント」機能が存在しません。

Facebookのように「追悼」ラベルをつけて保存する機能はなく、選択肢は基本的に「削除申請をする」か「そのまま放置する」かの二択になります。

これは遺族にとって非常に悩ましい問題です。

「故人のツイートを日記代わりに残しておきたい」と思っても、公式に保護する機能がないため、いつ何が起こるかわからない状態で放置するしかないのが現状だからです。

故人のツイートをそのまま残したい場合、公式に「保存」する手立てがないため、削除せずに置いておくしかありません。

しかし、Xのポリシーはイーロン・マスク氏の買収以降、非常に流動的です。

過去には「長期間ログインのない休眠アカウントを削除する」という方針が発表されたこともあり、「いつか消えてしまうのではないか」という不安が常に付きまといます。

また、削除ではなく「ユーザー名(@ID)の開放」が行われる可能性も示唆されています。

もし故人のIDが開放され、全くの別人がそのIDを取得して使い始めたらどうなるでしょうか。

遺族から見れば、まるで故人が生き返って別の発言をしているかのように見え、大きな精神的苦痛(なりすまし被害)につながりかねません。

もし削除を決断された場合、その手続きもMeta系に比べてハードルが高めです。

ヘルプセンターにある「プライバシーフォーム」から申請を行いますが、英語でのやり取りが発生するケースも報告されています。

申請には、申請者の身分証、死亡証明書、そして関係性を証明する書類が必要です。

一度申請を送っても、「追加資料を出してください」というメールが英語で届くこともあり、不慣れな方はそこで心が折れてしまうことも。

私が相談に乗ったあるご遺族は、英語のメールに戸惑い、「もう疲れたから放置でいい」と諦めかけていました。

翻訳ツールを使えば対応可能ですが、精神的に落ち込んでいる時にこの作業は酷だと感じます。

だからこそ、Xのアカウントを持っている方は、生前に「自分の死後は削除してほしい」のか「放置でいい」のか、家族に明確な意思を伝えておくことが、何よりの優しさになるのです。

LINEやGoogleのデジタル遺産対策も必須

LINEやGoogleのデジタル遺産対策も必須

SNSではありませんが、日本人のインフラとなっているLINEについても触れておきましょう。

LINEには追悼機能はなく、規約上、アカウントは「一身専属(本人のみ)」のものとされています。

つまり、本人が亡くなった時点で利用権は消滅するのが原則です。

遺族がスマホのキャリア契約を解約すれば、その電話番号に紐づいていたLINEアカウントもいずれ認証が外れ、消えてしまいます。

一度消えてしまうと、大切なトーク履歴や「LINE Keep」に保存していた写真データも二度と戻ってきません。

【注意】LINEのデータはバックアップが命

私が弟を見送った際、一番後悔したのがLINEの写真データでした。

スマホのロックが開けないとLINEの中身を見ることは不可能ですし、PC版LINEもスマホ認証が必要になるため手詰まりになります。

大切な写真は生前にGoogleフォトなどに共有しておくか、LINEの「アルバム」機能(トークルームごとのアルバム)を活用して家族と共有しておくことを強くお勧めします。

アルバム内の写真はサーバーに残るため、遺族側の端末からでも閲覧・保存が可能だからです。

また、Google(YouTube含む)には「アカウント無効化管理ツール(Inactive Account Manager)」という非常に優秀な機能があります。

これは、一定期間(3ヶ月〜18ヶ月など)Googleアカウントへのアクセスがない場合、自動的に「信頼できる人」にメールで通知を送ったり、事前に指定したデータ(Googleフォトやドライブの中身など)をダウンロードできるようにしたりする機能です。

まさに「デジタル版の遺言」とも言える仕組みです。

出典:Googleアカウントヘルプ「アカウント無効化管理ツールについて」

私も自分の設定を「3ヶ月間アクセスがなければ、妻に通知が行く」ようにしています。

この設定の素晴らしいところは、死後のことだけでなく、意識不明の重体になった場合などにも機能する点です。

無料で設定でき、かつ最強のデジタル終活ツールですので、元気なうちに設定しておくことを強く推奨します。

GoogleマップのタイムラインやYouTubeの履歴など、Googleには人生のログが詰まっていますから、それを誰に託すか(あるいは消すか)を決めておくことは重要です。

凍結と削除の違いを知りトラブルを防ぐ

凍結と削除の違いを知りトラブルを防ぐ

よく「故人のアカウントが凍結された」という話を聞きますが、「凍結」と「削除」は全く別のものです。

「削除」は遺族の意志で行う正規の手続きですが、「凍結」は規約違反によるプラットフォーム側からのペナルティ(強制停止)です。

なぜ、何もしていない故人のアカウントが凍結されるのでしょうか。

多くの場合、長期間放置されたアカウントがセキュリティの穴となり、乗っ取られ、スパム投稿の踏み台にされた結果、プラットフォーム側から「スパムアカウント」として検知され、強制停止を食らうパターンです。

「レイバンのサングラス」や怪しい投資勧誘の投稿が勝手に連投されているのを見たことはありませんか?あれです。

一度凍結されてしまうと、そこから正規の「削除申請」を行うには、非常に複雑な手順が必要になります。

まず「異議申し立て」を行って、アカウントが乗っ取られていたことを証明し、凍結を解除してもらわなければなりません。

その上で、改めて「死亡による削除依頼」を出すという、二重の手間が発生します。

私が相談を受けたケースでも、この泥沼にハマってしまい、故人のアカウントが変な宣伝ツイートをしたまま残り続けている…という痛ましい事例がありました。

遺族としては「早く消したいのに、ログインもできないし、運営に連絡しても『凍結アカウントからの申請は受け付けない』と言われる」と、八方塞がりになっていました。

こうした事態を防ぐためにも、「面倒だから放置」は禁物です。

なんらかの対策(削除申請か、追悼設定によるロック)を行うことが、故人の名誉を守る唯一の方法なのです。

 

家族を守るSNS追悼設定と死亡報告マナー

家族を守るSNS追悼設定と死亡報告マナー

機能的な設定と同じくらい相談が多いのが、「SNSでどうやって訃報を伝えればいいのか」という悩みです。

葬儀の日程を知らせるべきか、それとも事後報告でいいのか。

亡くなった直後は精神的にも混乱していますし、失礼があってはいけないと考えると、筆が止まってしまいますよね。

ここでは、読者の皆さんが迷わないよう、そのまま使える例文やマナーについて整理しました。

SNSでの報告は、今や新聞の死亡広告以上に多くの人に届く手段です。

適切なマナーを知っておくことで、故人の最後を美しく締めくくることができます。

そのまま使えるSNS死亡報告の例文集

そのまま使えるSNS死亡報告の例文集

SNSでの報告は、プラットフォームの特性に合わせて使い分けるのが正解です。

全てのSNSで同じ文章をコピペするのは避けましょう。

例えばFacebookは仕事関係や学生時代の友人が多いためフォーマルに、Instagramは写真と共に思い出を語るようなエモーショナルな投稿が好まれます。

一方、X(Twitter)は拡散性が高いため、個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。

以下に、私が作成したテンプレートを紹介しますので、状況に合わせて調整して使ってください。

シーン 例文テンプレート
【Facebook】

葬儀前の詳細報告

【訃報】

夫 ○○ ○○ 儀

かねてより病気療養中でしたが、去る令和○年○月○日、○○歳にて永眠いたしました。

ここに生前のご厚誼を深謝し、謹んでご通知申し上げます。

葬儀につきましては、下記の通り執り行います。

日時 通夜:○月○日(曜日) 午後○時より

場所 ○○斎場

生前、Facebookを通じて皆様と交流させていただいたことは、本人にとって大きな喜びでした。

略儀ながらこの場を借りてご報告申し上げます。

喪主 ○○ ○○

【Instagram】

事後報告(ストーリーズ等)

【ご報告】

母 ○○が○月○日、天国へと旅立ちました。

葬儀は故人の希望により、家族のみで済ませました。

母のインスタを見てくださった皆様、仲良くしてくださった皆様、本当にありがとうございました。

落ち着いたらまた、母のアカウントについてご連絡させてください。

今は静かに見守っていただければ幸いです。

【X (Twitter)】

代理投稿・削除予告

【代理投稿】

○○(@ユーザー名)の長男です。

父は令和○年○月○日、永眠いたしました。

父のアカウントを多くの方にフォローしていただき、生前はSNSでの交流を心から楽しんでおりました。

なお、このアカウントは○月末をもちまして削除する予定です。

生前のご厚情に深く感謝いたします。

特にX(Twitter)の場合は、リツイート(リポスト)で情報が一人歩きする可能性があります。

葬儀会場の住所や日時を詳しく書きすぎると、予期せぬトラブル(不審者の来場や香典泥棒など)を招くリスクもゼロではありません。

親しい友人だけに伝えたい場合は、オープンな投稿ではなく、DM(ダイレクトメッセージ)やグループチャット機能を使って個別に伝えるのが安全です。

私も弟の友人に連絡する際は、弟のスマホからLINEグループを探し、そこで一斉連絡を行いました。

これにより、本当に関係の深かった人だけに正確な情報を届けることができました。

投稿時に避けたい忌み言葉などのマナー

投稿時に避けたい忌み言葉などのマナー

デジタル上とはいえ、冠婚葬祭のマナーは守りたいものです。

特に年配の方も見るFacebookなどでは、言葉選び一つで遺族の品格が問われてしまうこともあります。

また、死を悼む場において、不吉な連想をさせる言葉は避けるのが大人のマナーです。

以下の「忌み言葉(いみことば)」には注意しましょう。

  • 重ね言葉: 「またまた」「たびたび」「重ね重ね」「次々」(不幸が繰り返すことを連想させるためNG)
  • 直接的な表現: 「死んだ」「死亡」(「永眠」「逝去」「他界」と言い換えるのがマナー)
  • 不吉な数字: 四、九など
  • 生死に関わる直接表現: 「生きていた頃は」→「生前は」、「生きている」→「ご存命」など

また、伝統的な作法では「句読点(、。)を使わない」というルールがあります。

これは「式が滞りなく流れるように」「縁が切れないように」という意味が込められていますが、SNSではそこまで厳密でなくても構いません。

読みにくくなってしまっては本末転倒だからです。

ただ、非常にフォーマルな投稿(会社関係者への報告など)をする場合は、句読点の代わりにスペース(空白)を使うと、「おっ、この人は分かっているな」と思ってもらえるかもしれませんね。

私も母の葬儀の際、親戚に見せる文章では句読点を外しましたが、友人向けのSNSでは読みやすさを優先して普通に書きました。

相手に合わせた「思いやり」があれば、形式に縛られすぎる必要はありません。

芸能人の追悼アカウント一覧から学ぶ事例

芸能人の追悼アカウント一覧から学ぶ事例

私たちが自分のアカウントをどうするか考える際、著名人の事例はとても参考になります。

彼らのアカウントは、死後どのように管理・運用されているのでしょうか。

例えば、神田沙也加さんや志村けんさんのアカウントは、ご本人が亡くなった後も更新こそ止まっていますが、今でも多くのファンが訪れ、コメントを残す「デジタル墓標」となっています。

命日や誕生日には、タイムラインが追悼のコメントで溢れ、ファン同士が悲しみを共有し合う場として機能しています。

これは、SNSが単なる情報発信ツールを超えて、故人を偲び、心のつながりを確認する場所として機能している好例です。

海外では、デヴィッド・ボウイやアヴィーチーのように、死後も運営チームが管理を引き継ぎ、アーカイブ写真や作品情報を発信し続ける「ブランド化」されたアカウントもあります。

一方で、管理者が不在のまま放置され、荒らしの標的になってしまうケースも残念ながら存在します。

心ない言葉が書き込まれたり、スパムコメントで埋め尽くされたりして、見るに堪えない状態になっているアカウントも少なくありません。

ここから私たちが学ぶべき教訓は、「残す」ということは、「管理し続ける」ということだという事実です。

著名人のように事務所やスタッフが管理してくれるわけではない一般人の場合、誰がその「お墓守」をするのでしょうか。

Facebookの管理人設定をしていない場合、その負担は全て遺族にかかってきます。

「みんなが忘れないでいてくれるから残したい」という気持ちは大切ですが、それが将来的に誰かの負担にならないか、一度立ち止まって考えてみる必要があります。

アカウント放置による乗っ取りリスクとは

アカウント放置による乗っ取りリスクとは

先ほども少し触れましたが、放置されたアカウントは犯罪者の格好の標的です。

私がセキュリティの勉強をしていた際、「死者のアカウントはサイバー攻撃の穴(ホール)になる」という話を聞いてゾッとしたことがあります。

具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。

最も多いのが、故人のアカウントが乗っ取られ、生前の友人に詐欺メッセージ(電子マネーの要求など)を送りつける被害です。

「死んだはずの友人から『コンビニでカードを買ってきて』というメッセージが来た」

これを受け取った友人のショックは計り知れません。

「天国からのメッセージかと思ったのに、詐欺だったなんて」と傷つく人もいるでしょう。

遺族としても、故人の顔写真を使って友人を騙そうとされたことに対し、申し訳なさと怒りでいっぱいになってしまいます。

また、電話番号(SMS)認証を使っている場合、遺族がスマホを解約した時点でその電話番号は手放され、一定期間後に別の人に割り当てられます。

もし新しい持ち主がSNSにログインしようとした際、SMS認証で故人のアカウントに入れてしまうリスク(意図しない乗っ取り)もゼロではありません。

こうした「デジタル・ハラスメント」とも言える事態を防ぐためにも、放置は絶対に避けるべきです。

削除するのか、追悼アカウントにしてロック(凍結)するのか、白黒はっきりさせることが、故人の名誉と、残された大切な友人たちを守ることにつながります。

「死んだら終わり」ではなく、ネット上では「死んでからが無法地帯」になり得ることを、どうか覚えておいてください。

遺族のために生前整理しておくべき項目

遺族のために生前整理しておくべき項目

ここまで読んで、「やっぱり準備しておかないとマズイな」と感じた方も多いと思います。

脅すようなことばかり書いてしまいましたが、準備さえしていれば、これらのリスクはほぼ回避できます。

私も大病を患った際、入院ベッドの上で真っ先にスマホのメモ帳を開き、家族への引き継ぎ事項をまとめました。

最低限、これだけはやっておいてほしいリストを共有します。

【今すぐできるデジタル終活リスト】

  • スマホのパスコードを信頼できる人に共有する: これが開かないと何も始まりません。エンディングノートに書くか、アナログですが紙に書いて金庫に入れるなど、オフラインでの管理が最強です。
  • SNSごとの意思表示: 「Facebookは残してほしい」「Xは恥ずかしいから絶対消して」「裏垢は墓場まで持っていく」など、希望を明確にします。
  • 追悼アカウント管理人の設定: Facebookを使っているなら今すぐ設定を。3分で終わります。
  • Googleの無効化管理ツールの設定: 一定期間放置で自動処理されるよう予約します。
  • 有料サブスクリプションのリスト化: 毎月課金されているサービスを書き出しておくと、遺族が解約漏れで無駄なお金を払い続けずに済みます。
特に「スマホのロック解除コード」は最重要です。

私が弟のときも、これさえ分かれば…と何度も思いましたし、逆にこれさえ分かれば、あとは遺族がスマホを操作して、各種SNSの退会手続きを進めることができます。

全てを整理する必要はありません。

入り口の鍵だけは、信頼できる誰かに渡せる準備をしておいてください。

それが、あなた自身のプライバシーを守ることにもなるのです。

IDとパスワード管理のコツ!できない人も続く安全な方法

まとめ:早めのSNS追悼設定で安心を遺す

早めのSNS追悼設定で安心を遺す

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

SNS追悼設定やデジタル遺産の話は、どうしても「死」を連想させるため、気が滅入りますし、後回しにしがちですよね。

「まだ若いから大丈夫」「縁起でもない」と思う気持ちもよく分かります。

ですが、私が弟を見送って痛感したのは、「整理は、残された人への最後の思いやり(ギフト)」だということです。

悲しみの中にいる家族に、パスワード解除のための書類集めや、なりすましトラブルの対応といった、面倒で精神を削る手続きをさせたくない。

そう思うだけで、少し行動してみようという気持ちになりませんか?

完璧を目指す必要はありません。

まずはFacebookの管理人設定や、Googleのツール設定といった、今日できる小さな一歩から始めてみてください。

あなたのそのひと手間が、いつか大切な人を救い、あなたの生きた証を美しく守ることになるはずです。

もし手続きで迷うことがあれば、公式サイトのヘルプページをよく読み、それでも難しければ詳しい専門家に相談することも検討してくださいね。

あなたのデジタルライフが、最後まで安心できるものであることを心から願っています。

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